ぷらっとほーむの日記 ぷらほブログ

山形市・若者の居場所と学びの場づくりのNPO団体です

トークライブ&ラーニングバーinぷらほ vol.1

ワイ子です。「トークライブ&ラーニングバーinぷらほ vol.1」が開催されました!
記念すべきinぷらほ第1回目のゲストは、山形市鈴川にあります洋菓子店「パティスリー菓樹」の樋口愛子さんです(司会進行・愛ママ)。ぷらほと同じく、けして大規模のお店ではないけれど、パティシエ・樋口俊幸さんと愛子さんの二人三脚で今年10周年を迎えた菓樹さん。「まじめなスイーツ専門店」として、どんなミッションでお菓子を作り続けているのか。どのような苦労や気付きがあったか、などなどを聴かせてもらいました!


「パティスリー菓樹」はどんなお店?
菓樹さんがどんなこだわりを持っているのかというのは、お店のHPのこちら→に詳しくありますが、「大事な人に食べさせたくないものは作らない」「お菓子は芸術品ではなく食品である」を信条に、トランス脂肪酸を含むショートニングやマーガリン、着色料や保存料などの添加物を使用しないで手作りをする。そして、「プリンやロールケーキなどの定番メニューがどこよりも美味しい」といわれるようなお店でありたい、という想い――ミッションを持って営業されています。IT系の会社を辞めパティシエを目指した俊幸さんは、山形や仙台の洋菓子店で修行を始め、12年の修業の末(その間に愛子さんと出会ってパートナーとなり)、2003年に「菓樹」をオープンしたのでした。


始めてみての壁
始めた当初、お二人は「おいしいものを作れば、お客様は来てくれる」と思っていました。しかし思うように来客が増えず、苦しむ時期がつづきます。銀行からの借金もあり、やめるにやめられず、次の日食べる米もなかったり体を壊したりもした。だけど、そんなときに銀行やご近所の人から手助けを受け、また、無理をせず力を抜くことを覚えたのだそうです。
やがて、「来てもらうためにお店のことを発信しよう」とHPづくりを業者に委託。その際に「お店のこだわりは何?」と訊かれたとき、自分たちが目的をハッキリと持たないまま経営していたことに気付きます。というよりも、前述の「こだわり」を、当時は「あたり前」だと思っていたため、改めて表に伝えることはしていなかったのです。その「あたり前」の部分が実は菓樹さんの「売り」なのだと指摘され、「こだわり」としてお客様に伝えていくようになったのでした。
それでも、続けていくなかで、ブレそうになったときもあるそうです。集客のために、ミッションから外れたことも引き受け、「お金のために作ってしまった」⇔「お客さんが喜ぶのならいいじゃないか」で揺れる。特に、俊幸さんが職人として苦しんでいた。だけどそんな時に、HPづくりで相談した人から、「お菓子作りは俊幸さん、客呼びは愛子さん」と役割を客観的に教えてもらって、それぞれが自分の役割に専念できるようになったとのこと。それから、「これでいやだったら来なくてもいい」くらいの気持ちで、他社批判にならない程度に、自分たちのミッションを伝えるのも仕事だ、と考えるようになったのでした。


軌道に乗ったのは。
近所の人の応援やいろんな方のご縁があって、「こんなに頑張ってるんだから、いろんな人に宣伝するからね」という口コミをしてくれた、その人達のおかげ、ということでした。菓樹さんは、掲載料を払う広告を出していません。確かに広告すれば多くの人に知ってもらえますが、その代わり自分たちのミッションに合わない人も来ます。口コミで来てくれる人はミッションを理解してくれていて、何かトラブルがあっても、「こういうことがあったから、他にもあるかもしれないよ、気を付けて」と教えてくれ、クレームというのは少ないそうです。菓樹さんのお菓子を見て「これ大丈夫?」と言われることもあるそうですが(着色料を使わないので沈んだ色になる・小麦粉のお菓子はしっかり焼くため焼き色が濃いなど)、ミッションを伝えてわかってもらうようにしています。
「クレームの来る/来ない」というのは、買う人が「消費者」かどうかなのだろう、と愛ママ。「できるだけ安く、いいものを、大量に手に入れたい」と消費だけが目的になると、作る側の伝えたいことが見えなくなる。価値を見い出し理解して投資することをしないまま、「安けりゃいい」で与えられることばかり求めていると、本当に良いものが周りから消えていく(=つまらない場所になる)ことにつながるんじゃないでしょうか。


失敗や苦労したこと。
とにかくお客様に育ててもらった。たとえばお菓子の値段付けで、俊幸さんは職人気質なので、「この技術で高い値段をつけるのは申し訳ない」と、かなり安値に設定していたそう。だけど、買う人の方から逆に「これは安すぎるよ!」と指摘され、値上げをしたことがあったとのことです。この件では、高くなったことで離れるお客さんもいたけれど、価値で買ってくれる人が増えたので、逆に良かった。

また別の失敗談では、週一回、安売りをやってみた時のこと。そうしたら「○曜日が安い店」という評判になり、その日しか来なかったり、違う日だと知ると帰る人まで出てきてしまった。その結果利益が出なくなるし、俊幸さんも荒んでいってしまいました。これも思い切ってやめて、利益を出すようにしました。やっぱり、利益は出していかないと悪循環になります。「儲けることは悪いこと」と思っていたけれど、「いや、正当な利益はもらっていいんだ」と考えるようになったそうです。お客様は「菓樹さんがなくなったら困る」という気持ちも含めて買ってくれているのだ、と。


店をやってみてわかること。
愛ママが今年入店して「ぷらほも10年です」と言ったとき、愛子さんは「続けるって大変ですよね」と口にしたそうです。それを聞いた愛ママは、机上の空論的でない、体当たりの経験と積み重ねがあるから出てきた言葉だと思ったのでした。
あるとき、愛子さんは啓発系のセミナーに行ってた時期がありました。しかし、「こうすればうまくいく」「失敗しない方法」と話してる人の成功談を聴いても、「それはこの人の方法であって、私には私の方法があるのではないか?」と、ストンと自分の中に落ちてこなかった。自分で苦しんで失敗を重ねないと、自分のオリジナルの経験ができていかないんじゃないかと思ったのだそうです。「これやるといいよ」「これが正解だよ」という言葉は確かに聞こえがいいし楽そうです。でも、それに流される人、その人相手に商売する人がいるというのは怖い。
また愛子さんは、仕事でも私生活でも大変な時に、そのことを周囲に出してはいけないと思っていました。でももう限界になって、「困ってます、助けて!」と出してみたら、いろんな人が援助してくれた。そういう人たちを裏切れないから、店をなくすことをしちゃいけない。そして、恩を返せる時に返せばいいんだ。そんな想いを持って、お二人はお菓子を届けています。




オードブル

焼きそば

玉子焼き

乾杯

お差し入れ

全体2